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2007.12.28 (Fri)

みくみくになるのかな

ネット速度の基準では出遅れだが、初音ミク騒動が無事に(たぶん)収束したということで。ひょっとすると鏡音リン・レン発売前に決着をつけようという配慮もあったかも知れない。
クリプトン | VOCALOID2特集
http://www.crypton.co.jp/mp/pages/prod/vocaloid/
ドワンゴによる初音ミクオリジナル曲登録問題まとめ(γ) - トップページ
http://www32.atwiki.jp/mickmiku/

事件をリアルタイムで追っていたわけでもないけれども、自ずと情報は目に入ったもので、一言。

今回の事件の特徴はいくつかあって
  1. 権利ビジネスを行う企業が、実際にはクリエータを無視or軽視していたことが明らかになった
  2. クリエータの側に明示的にポジショニングする企業が現れた
  3. クリエータが、二次利用を含むユーザの利益を意識して行動していた
とりあえずこんな感じ?
いずれも個々には以前から(少なくともぼんやりとは)認識されていた事項だとは思うが、これが明確に表に出てきた上に、組み合わさっていたところが特徴的だったと思う。

(音楽業界の?)権利ビジネスのあり方

「クリエータのために」を自称する企業が本当に権利者のために(あるいは文化の発展のために)行動しているかについては以前から疑問は呈されてきた。
これまでのところはミュージシャンが不利益を被っても業界の内部でやっていくためにはあまり大きな声を上げられなかったのが、今回は必ずしもそうする必要のないアマチュア・ミュージシャンが巻き込まれたことで、問題が焙り出された面があろう。

ドワンゴ側は当初「音楽業界の慣行」を根拠に自らの立場を正当化しようとした模様である。
これに対しては「他の業界やアマチュアに自らの業界の慣行を押し付けるのは不適切、説明不足」との指摘もある。(*1)(*2)
担当者自身は自らの適切だと理解する行為規範に従って行動していたという意味では、faultはさほど大きくなかったと言えるのかも知れない。しかし、その行為規範自体が相手方や第三者からどう見えるか、という視点を欠いていたという点では想像力不足は否めない。さらに言えば、そうした行為規範の存在を曝け出してしまったという点で、実はクリエータを軽視するという業界の体質ないしシステムを明らかにしてしまったとも評価できる。

クリプトン社のポジショニング

ソフトウェア「初音ミク」の発売元のクリプトン社が自らの商標等の権益を守ろうとするのは当然であろう。
しかし、クリプトン社(の側で対応に当たった伊藤社長)は、自らの権益ではないにもかかわらず(*3)、クリエータの権益を擁護する立場を明示的に取っていたように見える。
この点、クリプトン社はDMPソフトを売っている企業である以上、その顧客である(アマチュア)クリエータ側に立つのは資本の論理からして当然との理解(*4)の一方で、同社伊藤社長の来歴からすると本気でDMP文化の願っているとの指摘もある。

このエントリではいずれであるかは問題にしない。
ともかくは伊藤社長、頑張れ、ということで。札幌の企業でもあるし。

ここでは一般化するためにも、仮に前者だったとして、話を膨らませる。でもそれもネガティヴに評価されるべきではないだろう、と。
市場の機能不全や(本件のように)資本のオーボーが出てくると、サヨク系な発想をする人はすぐに「だから市民社会による云々」と始めてしまう。それはちょっと違う、そう考える必要はないのではないか、と。

アメリカのコンテンツ・ビジネス法の本を読んでいて「南北戦争」なる語にぶつかったことがある。ハリウッド等があってコンテンツ産業の集積するカリフォルニア州の“南”と、シリコン・バレーに集積するIT産業を持つ“北”とが、著作権の強化等をめぐってロビイング合戦等を繰り広げている、という話。もちろん前者が権利強化を主張するのに対し、後者がコンテンツの自由利用を推進することでそのハード・ソフトの売り上げ向上を目指している。後者もユーザの利益自体を目標としているわけではないが、結果としてユーザの利益を擁護するポジショニングをすることになる。

本件を見て、この話を思い出した。「市民社会」論に飛びつかなくとも、資本の論理の内部で、結果的に“市民”の権益が守られることはあり得る。しかるべき資本の配置があれば??一般化すれば、十分に多様でpluralisticであるという条件の下では。(*5)(*6)

Web2.0的クリエータ

(*7)そして、クリエータ達がオーディエンスの権益を意識して行動していたのも印象的である。具体的にはJASRAC管理下に入ることで二次利用が制限されることを懸念する声が相次いで上げられている。
これは、クリエータ自身が他者の作品の二次利用をしている、という行動様式から来るものであろう。少しずつ手を加えていくことで磨いていく。そうしたほうが面白い、ということを身を以って了解している。相互利用はフリーライドというよりは、むしろ相互のリスペクトをもたらしている。(*8)

決着と今後

さて、一応は落ち着いた。
ニコニコニュース‐着うた配信及び今後の協業に関する共同コメント
http://blog.nicovideo.jp/niconews/2007/12/000756.html
着うた配信及び今後の協業に関する共同コメント:メディアファージ事業部 ブログ
http://blog.crypton.co.jp/mp/2007/12/post_63.html
落ち着き所であるこの文書を見て思うことは、「これは何?」ということである(汗)
そりゃもちろん和解契約であるわけだが(1.項参照)、契約当事者はDMPとクリプトン社。両者間の権利義務関係であればこの和解契約で取り扱うことができる。

しかしこの文書には第三者たるクリエータの権利についても規定がある。これは一体いかなる法的性質を持つのか。第三者のためにする契約?unilateral contract?

具体的なシチュエーションを想定すると、4.(6)項はDMPがクリエータに楽曲利用を申し入れる場合の条件を規定している。それでは実際にDMPがこの条件を満たした申し入れをしなかった場合(例えばJASRAC以外の権利管理手法の可能性を説明しなかった場合)、クリエータはいかなる主張をなし得るのか?クリエータはこの条項を援用できるのか?援用できるとしてその効果は?(ライセンス契約不成立?損害賠償?)謎だらけである。

4.(6)項以外にも第三者の権利に関する規定はある。しかしこれらは(「確認します」という文言にもなっているが)この文書がなくとも著作権法上当然にクリエータ等に帰属している。
この点をわざわざ明らかにしなければならなかったことを裏から意地悪く見れば、業界が如何に法律上当然の権利の帰属を軽視してきたかの証左とも評価し得るかもしれない。
4.(6)項についても、民法上の説明義務等についての考え方如何では、これまた当然のことを規定したと位置付けることになるのかもしれない。(*9)


資本主義社会の構造とも結合して、供給者とユーザとが分離したモダンな状況から、ユーザ=クリエータの相互参照というポスト・モダンな環境へ。
それに応じた法制度へ。
この事件はそのエポックを画する出来事になるのか。あるいは一時の現象に終わるのか。評価は後にならないと確定できないが、希望的観測を込めて前者であると期待したい。
故に活字化して記録しておく価値があると思うのだが。詳しい弁護士さんとか、ジュリストあたりに書いてくれないかな。

【More・・・】

*1 このこと自体、「慣習」を如何に認定するか、如何なる範囲で存在していれば「慣習」と言えるかという興味深い問題を呈するが、ここでは問題点の指摘に留める。
*2
クリプトン・ドワンゴ争議の理解 - さぼり記
http://d.hatena.ne.jp/azuki-glg/20071221/1198251396
こちらのブログ・エントリは出版業界を参照する形で、商品をリリースする日が明確に定まっていることで、契約関係を曖昧にビジネスを進める実務が生成し、また正当化されるのではないかと指摘している。
(この解釈の可能性自体は否定しないが、)漏れ聞く音楽業界の状況に照らすと、私見では音楽業界のほうが(著作者から見て)もっと“あくどい”のではないかと思える。特に、出版の分野では権利自体は著作者にあることを前提としているのではないかと思えるのに対し、音楽の分野では著作権自体が(いつの間にか)権利ビジネス企業側(あるいはそこを経由してJASRAC)に移転されてしまって、著作者自身が自分の曲を自由に使えなくなってしまう、という話も聞かれる。
*3 *2に挙げたブログ・エントリは、この点の整理もまとまっている。
*4
たけくまメモ : クリプトン伊藤社長の「態度」
http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2007/12/post_e91a.html
*5 そして規制緩和と市場化というのはそうした多様で多元的な産業構造を目指すはずのものなのだが。
*6 もっとも、常にうまく行くとは限らない。現時点で最も巧くやっている“北”の企業の一つアップル社が、iTMSのDRMで総スカンを食らっている例もある。もっともさらに言えばその延長でDRMなしの音楽配信の動きも広がっているようであるし、一概には言えないかもしれないが。
Amazon to Sell Warner Music Minus Copy Protection - New York Times
By JEFF LEEDS
Published: December 28, 2007
http://www.nytimes.com/2007/12/28/technology/28music.html?ex=1199509200&en=4952c7a0649f1ce8&ei=5070&emc=eta1
*7 ちょっと古いネーミングだけど許して。
*8 これが可能となった技術的コンテクストとして、ニコ動等の動画共有技術に加え、検索技術も指摘しておく。検索技術の発達は、誰/どれが初出であるかの特定を容易にした。こうした環境下ではfront runnerに対するrespectの簒奪はできない。
*9 というか、アマチュア・クリエータの場合、消費者契約法の適用はあるのか?民法の教科書くらいは持って来れば良かった。
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テーマ : 法律全般 - ジャンル : 政治・経済

23:38  |  日本社会  |  TB(0)  |  CM(0)  |  EDIT  |  Top↑

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