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2008.10.28 (Tue)

Re: サンスティーンを最高裁に!

こういう話は選挙結果が出る前しか書けない、ということで。

当選したら新大統領が指名するであろう最高裁裁判官の候補を云々したUSA Todayの記事を、macska氏が紹介している。
For divided high court, two potential legacies - USATODAY.com
By Joan Biskupic, USA TODAY
http://www.usatoday.com/news/politics/election2008/2008-10-23-candidates-courts_N.htm
サンスティーンを最高裁に! - *minx* [macska dot org in exile]
「注目は、オバマが当選した場合の最有力候補の一人に、キャス・サンスティーンが挙げられていること。
近年、最高裁判事には裁判官としての経験が長い人が指名されることが多いのだけれど、ただの学者でなく「世界一多くの論文に引用されている法学者」として知られるサンスティーンであれば文句の付けようがない…」
http://d.hatena.ne.jp/macska/20081024/p2
確かにSunstein(*1)はビッグネームだし、憲法分野に限らず行政法・環境法・サイバー法etc.守備範囲も広いし、行動経済学の参照など方法論的にも懐が深いのは魅力的だし、裁判官(=権力者)になったら何を言うかというのも面白いし興味がある。案外プロ・ビジネスな面があるのもそちら方面から受け容れられるだろう。というか、シカゴつながりだし、自分的にもまず思い付く名前ではある(笑)

しかし、というかだからこそ、ないんじゃないか、というのが自分の観測。
何故ならば、多くの著作がある有名人を候補にするということは、反対する側から見れば攻撃する手掛かりが多いということでもある。そしてそれを見越せば、もし新政権が新裁判官人事を“すんなりと”通したいのであれば、そのような抵抗の可能性の高い候補は避ける、ということになる。
そうすると新政権は人事を“すんなりと”通したいか、あるいは正面突破を狙うのか、という問いになるのだが、これは議会の選挙結果、特に上院で60議席を確保するかという点に依存することになる(*2)
しかし、議会で十分な議席を獲得するということは、中道~従来の反対党支持者・選挙区を取り込むことに成功した議員を内に抱え込む、ということでもある。そうすると、“とんがった”人事は自党からの反対(までは行かなくとも抵抗)を誘発する可能性がある。

以上のような観点から、新政権の最高裁人事、特に最初の空席に関する人事は“穏健な”人物を指名するだろうと予想する。
さらに踏み込むと、前述の「攻撃の材料を与えない」という観点からも、最右翼の候補は「現時点で名前の挙がっていない人物」、というのが自分的予想である。

実際、これはGeorge W. Bush政権で採られたアプローチでもあった。
O'Connorの退任がアナウンスさらた後、Bush政権はほとんど下馬評に挙がらなかったRobertsを指名した。Rehnquistの突然の死去に伴う主席裁判官候補への横滑りはBush政権にとって事実上唯一の選択肢であっただろう(*3)
Alitoは早い段階から名前の挙がっていた人物だが、彼も元々の候補ではない。元々、政権が指名したのはMiersで(*4)、彼女も名前の取り沙汰されていた人物ではない。逆に言えば、Alitoのような既に書いたもののたくさんある(*5)候補を出さなければならなかったのは、政権としては“最後の手段”だったともいえる(*6)

Sunsteinに戻れば
「今年の春にリチャード・セイラーとの共著で出した『Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness』は、サンスティーン自身がオバマのアドバイザーであることとも関連して、来るべきオバマ政権における政策のブループリントだと言う人もいる。」
だとすれば、裁判官ではない形で政権に入るand/or関与するのではなかろうか。


他に自分がコメントできそうな名前というとHarold Hongju Kohか。
ただ、彼は本業国際法で、(米国内であまりウケの良くない)内国憲法裁判において外国法・国際法を参照することの旗振り役もしていて攻撃材料だらけ。
もっとも、そういう人物を最高裁に据えることに成功すれば「アメリカは政権が変わって司法の面でも国際協調主義に舵を切ったのだな」というメッセージを明確に伝わるだろうが、、、
やっぱないだろう。


新政権の人事の結果として最高裁がどうなるかについては、以前書いたobservationを変更する必要はない、と考えている。

【関連】

Kennedy's Court? - アメリカ法観察ノート
連邦最高裁2007-08年度開廷期の中間評価 - アメリカ法観察ノート
Roberts Courtの保守傾向 - アメリカ法観察ノート
Tribe v. Olson - アメリカ法観察ノート

【More・・・】

*1 どうでもいい話だが、やっぱ普通は「サンスティーン」と読むか。自分はつい(部分的に)ドイツ語読みして「サンシュタイン」と読んでしまう。Cf. Einstein.)でも「ズンシュタイン」とは読まないw
*2 また、タイミングの問題もあろう。政権にとって最初の最高裁人事か、2番目(以降)か。他の政治状況との関係でイケイケか、defensiveな状況か。逆に、現在の裁判官はこれも見越して退任をアナウンスする時期を判断するだろう。(Rehnquistのようにその余裕もない可能性はゼロではないが。)
*3 ロジカルな選択肢としては
  • 第三者を主席裁判官候補として指名する
  • 現員陪席裁判官を主席裁判官候補に指名し、その後任人事を行う
  • Robertsを主席裁判官候補に横滑りさせ、改めてO'Connor後任人事の候補を指名する
とあったわけだが、(a)は「いろいろ考えた結果この人物がベストなんですよ」と言ってRobertsを指名したことと平仄が合わない。(b)は(1)現員陪席裁判官のRehnquist主席裁判官後任人事、(2)RobertsのO'Connor後任人事、(3)主席裁判官になった現員陪席裁判官の後任人事と3つの人事手続を経なければならず、政治的コストが上がる。となると2回ですむ(c)を選ばざるを得ない。
*4 nepotism、論功行賞だと批判されて(事実上の)撤回をする羽目になったわけだが。
*5 彼の場合、控訴裁判所裁判官として。
*6 それでも通ったのは議会の状況が共和党有利だったからだし、逆に言えば議会がそのような状況でもBush政権はあくまでも「民主党に攻撃の隙を与えない」人事の可能性を探っていたことになる。
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