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2008.08.08 (Fri)

分母と分子

法科大学院の統廃合表明 法相「低実績校は整理」
「…新司法試験の合格率は4割程度にとどまって当初目標の7、8割には遠く及ばず…」
「「教育能力のない学校は学生に配慮した上で合併かやめるかし、あるべき法科大学院の姿を目指して整理すべきだ」」
http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008080701000762.html
あのさぁ、LS学生が一学年当たり5825人いるのに対し(*1)、新司法試験合格者数が3000人固定(*2)だったら、「教育能力」の有無にかかわりなく絶対に「7、8割」なんて達成するわけないじゃん。
それに触れずにこういう書き方をするのは、相当分かっていないか、さもなければ悪意があるように思えてならないのだが。控えめに言ってフェアな書き方ではない。

もっとも(各大学個別のではなくトータルの)合格率のほうで大学側でコントロール可能な要素もないわけではない。「修了させない」という選択肢がある(*3)
でもこれは日本の教育システムが伝統的にやってきたやり方じゃないよね。ずっと入口の定員でコントロールしてきた(*4)
医学部定員増はスルーですかそうですか。医師については「質の低下」を心配する必要はないんですか。
asahi.com(朝日新聞社):09年度の医学部定員増へ、過去最大の8280人目標 - 社会
「全体で過去最大規模の8280人(08年度は7793人)程度の入学定員を目指す。」
http://www.asahi.com/national/update/0805/TKY200808050412.html
医師不足:医学部定員増条件、地域貢献計画を 文科省、大学側に - 毎日jp(毎日新聞)
「 09年度の入学定員を08年度(7793人)より487人増やすのが目標。」
http://mainichi.jp/select/science/news/20080806ddm012040064000c.html
来年度医学部定員 8280人程度に増員へ : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「来年度の国公私立大学医学部の総定員を、2008年度の7793人から約500人増やして、ピークだった1982年の8280人程度にすると発表した。すでに、179人の増員は決まっているため、残りの約320人の増員を目指す。」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080806-OYT8T00316.htm
1980年代前半と同水準の定員になる、とのことだが、ちなみにこの時期と現在の間には、団塊ジュニアが受験期を迎えた90年代前半が挟まれている。この間の時期、定員=分子が抑えられて、受験生=分母が拡大していたのだから、少なくともこれをベンチマークにすれば「質の低下」は避けられない(*5)

LSに話を戻せば、現状はちょっと多いよな、という感触については自分にもある。もうちょっと少なくていい。定員にして4000程度。これなら新司法試験合格者が3000人ということでも(*6)75%の合格率になる(*7)
教員の側から見ても、そのくらいの規模で集約して教育する態勢を整えていくのがいいのではないか(*8)

そして、法務省や文科省が介入するまでもなく、潮目が訪れるのは案外早いのではないか、というのが自分の見立てである。
特に「背伸び」して作った私大は、経営の目玉になると思って作ったのだろうが、合格実績が伸びず学生・受験生が集まらないとなると逆に一気に経営の負担になる。新たな投資をすることで状況を打開するというのも難しい(*9)。経営という観点からは既に厳しいところもあるのではないかと思われるし、そういう大学は“出口戦略”を睨む必要があろう。
そうだとすると、早ければ来月発表の今年度の結果を見て、一昨年・昨年も思わしくなかった大学は来年度以降の募集(今秋入試)の停止を発表する所も出てくるのではないか。今年は出てこない可能性も高いが、ここ2~3年だろう。(*10)
そして、現在はどこも「最初」にはなるまいと根比べをしているが、「最初の一校」が出てくれば一気にLSをたたむ大学が現れる、と読んでいる。(*11)(*12)
Matimulog: LS統廃合の足音
法科大学院協会の8月7日付け声明(PDF)でも、青山善充理事長名で以下のように述べられている。
「現在の各法科大学院が万事理想的な状態にあると主張しているわけでは決してない。
…法科大学院の側から言えば、それぞれの法科大学院が自らの意思でこの重要な使命を引き受けることを決断した結果である。もし社会から負託されたこの使命に相応しい教育成果--それは司法試験に合格さえすればよいということではない--を挙げることができない法科大学院があるとすれば、淘汰されても当然であると私たちは考える。」」
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2008/08/ls_fdf2.html

【More・・・】

*1 平成19年度時点・定員。平成19年度法科大学院一覧-文部科学省。もっともその後、新しい認可はない、はず。
*2 予定。それすら弁護士会の反対で実現するか分からない。平成19年度合格者は1851人。
*3 一部の法科大学院はやっている、らしいとの噂も聞くが。
*4 司法研修所、とか。
*5
404 Blog Not Found:この読後感は錯覚じゃないよね? - 書評 - 学力低下は錯覚である
「大学が100人の島だったとしましょう。島の定員が100人というのは今も昔も変わりません。この島では、本土の高校卒業生のうち、最も優秀な30人を入学させています。かつて、本土の高校からは毎年120人が卒業していました。そのころに入学していたのは、上位25%ということです。ところが、今や高校卒業生は毎年60人しかいません。上位50%であれば入学できるのです。
もし高校卒業生の学力、正確には学力の分布が変わらないとしたら、かつての30人と同じ学力を持つ生徒は15人しかいないはずで、残り15人はかつてであれば大学に入学するには学力が足りなかったのに、島の定員が変わらないため入学できてしまった生徒ということになるのです。Q.E.D.」
http://blog.livedoor.jp/dankogai/archives/51073546.html
*6 実現すれば、だが。
*7 もっともこれは大雑把過ぎる計算で、滞留者や受け控えも計算に入れると実際の試験をやった場合の見た目の合格率はもうちょっと下がるだろうが、「LSに合格した時点で4分の3の確率で法曹の資格を得られる」というのはまぁまぁ悪くないexpectationだろう。
*8 周囲の先生を見ても忙しい方ばかりだし。大体、論文の生産数が明らかに落ちている。
*9 合格実績があれば優秀な学生が集まりさらに実績が高まり…という好循環に入ることができるが、実績が出ずにそちらが難しいとなれば、あと手を打てるのは教員を中心とした教育体制のほうである。だが、未だ歴史が浅い以上、“効果的”な教育メソッドが確立しているわけでもないし(旧試験の予備校のメソッドはどの位対応できるのだろう?)、そうなると残るのは個々の教員の能力と工夫と熱意のみ。だがそういう教員は既に確保されてしまっているだろう。
*10 特に今年は、最初の「三振博士」が出てくる。コメント参照
*11 学生定員が多いが合格率が伸びないLSは特に難しい判断を迫られるのではないか。学生定員を削ることで教育リソースを集中的に投入するという戦略が考えられる一方で、これは経営体力を削られ続けることを意味する。
*12 また別のシナリオとして、一応法科大学院としては維持しつつ、新司法試験自体は直接に狙わず(「受かればラッキー」くらいの位置付け)、他の資格等に照準を合わせる形にカリキュラムを組み替える大学も出てくるかも知れない。もっともそのような戦略によって受験生・学生の募集という経営の根幹を確保できるかは分からない。
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テーマ : 法律全般 - ジャンル : 政治・経済

02:19  |  日本社会  |  TB(1)  |  CM(4)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

三振博士は、もう出ているはず。LS在学中に旧試を受けた場合は一振りにカウントされるから。
takabee |  2008年08月08日(金) 21:27 |  URL |  【コメント編集】

あぁっと、そうですね。
訂正しました。(恥を保存するために見え消しで。)
IZW134 |  2008年08月09日(土) 01:29 |  URL |  【コメント編集】

先週の土曜、都内の某大学法学部大学院の教室で、この話題になりました。関西の私立大学准教授が、優秀な学生には敢えてLSを目指さず、他の選択を進め、学部長に苦言を呈されたと。
でも、真面目で実務経験もあるまともな人だからそういうことを言えるのですね。

できの悪い学生は試験を受けさせない、卒業させないというのはランクの低い大学の医学部では既に常識です。

資格取得したら、だれでも飯が食えるなんていうことは、どんな資格にもないわけですし、試験で優秀だということが実務で優秀だということとは違うし、優秀な実務家と上手にビジネスをする人とも必ずしも一致しないし、結局、みんなわからずに幻想というかMyth を信じて議論しているから駄目です。

LSを出たけど、試験に受からなかった、あるいは、資格はとったけど食えないという人の受け皿として公務員として採用するという考え方もありうるはずなのです。しかし、日本のキャリア・システムの中では、そのような制度を設けたとしても、その人たちは飼い殺しにされるだけでしょう。
nk24mdwst |  2008年08月12日(火) 13:44 |  URL |  【コメント編集】

> できの悪い学生は試験を受けさせない、卒業させないというのはランクの低い大学の医学部では既に常識です。

ご指摘ありがとうございます。(言われてみると、そのようなことを指摘しているデータに接したことがあった気もしますが失念していました。)
LSを導入した際には医学部モデルが念頭にあった、と了解しているものですので、両者の取扱を違える言説には引っ掛かってしまいます。
やや勇み足気味ですがエントリは残しておきます。

> 資格取得したら、だれでも飯が食えるなんていうことは、どんな資格にもない

これは全くその通りだと思いますし、だからこそ“地頭”というか、問題に粘り強く対応できるようになる知的足腰こそがより重要なのでしょうし、それがLSを含む(あるべき)高等教育に求められることなのでしょう。
法科大学院協会の声明の「それは司法試験に合格さえすればよいということではない」というのもそのような意味だと了解します。

> 日本のキャリア・システム

結局、ここなのですよね。
しかも公務員のみを取り出して論じるのも不十分で、ある程度のスキルと経験を持った人材の労働市場がさっぱり機能していないのが、日本の閉塞感の重要な一部(それ自体という点でも、他の問題の原因となっているという点でも)だと考えています。
IZW134 |  2008年08月13日(水) 15:13 |  URL |  【コメント編集】

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