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2008.05.17 (Sat)

高等教育の授業料

先日のエントリで大学と寄付という話題に触れたので、書こうと思って書いていなかったネタ。

アメリカのロースクールの授業料はバカ高い。

日本でLSを作る際にも授業料は論点だったが、日本のそれがかわいく見えるほど、目茶苦茶高い。ロースクールに限らずprofessional schoolは、「あんたら卒業したら稼ぐんでしょ」と言わんばかりにしばしば高額の授業料を取る。今の私立のロースクールであれば年3万ドルオーバーはザラである。
普通のJ.D.の学生であれば×3、もちろん他に生活費やら本代やらもかかる。夏に--つまりこれからのシーズンだが--働くというカルチャーがあるとは言え、見習いみたいなものだし、焼け石に水。

日本だとそこで「高額所得者しか弁護士になれない。ケシカラン」となってしまうのだが、そこはそれ、アメリカは資本主義の国、そういう面がないとも言えないが、困ったときには市場が何とかしてくれる。つまり貸与制奨学金のシステムが発達している。
貸与制「奨学金」というと何だかよさげだが、英語ではズバリ"student loan"である。要するに借金。
つまりロースクール卒業生=新米弁護士は、10万ドル=1000万円を超える借金を抱えて働き始めることになる。

このことは新米弁護士のキャリアにも影響を及ぼす。
とにかく借金を返さねばならないから、第一の人気の就職先は、給料のいい、大都市の大ローファームということになる。
逆に、給料のあまり高くない職にはなかなか人が集まらない。たとえその人がその分野で働きたいという情熱を持っていたとしても。
そのような職の典型が、検察官事務所を含む(広義の)public interest職(*1)である。(*2)

public interest
撮影したのは数ヶ月前だが、「刑事の弁護士(検察側・被告弁護人側双方)になりませんか」と呼びかける説明会のビラ(*3)
こうやって学生の関心を高めようとしている。

Harvard Law, Hoping Students Will Consider Public Service, Offers Tuition Break - New York Times
By JONATHAN D. GLATER
Published: March 18, 2008
http://www.nytimes.com/2008/03/18/us/18law.html?_r=1&th&emc=th&oref=slogin
この方面における新しい動き。
ハーヴァード・ロースクールが、政府やNPOで働くこととした学生に対し3L時の授業料を免除することとしたというもの。


もっとも、高額な授業料というのはロースクール/professional schoolに限られた話ではなく、アメリカの高等教育=大学教育において一般にいえる話ではある。
そしてこのことは、政治的/政策的にも問題だと認識されている/つつある。
もっともその動機は、高等教育の分配の公正の問題としてではなく(そうした側面もあるのかも知れないが)、財政構造の問題としてである。
すなわち、student loanにおいては連邦の財政支出に基づくプログラムが重要な役割を果たしている。(元)学生の無資力リスクなどは連邦財政が負担することになる。
他方、大学は「非営利組織」として税法上有利な地位を享受して寄付を集め、結果かなりの資産を保持しながら、貯め込むばかりで必ずしも還元されていない。これはどうよ、ということである。

かくして、大学に対してもっと金を使え、とりわけ学生へ還元するようにせよとの政治的圧力が強まることとなる。
Senate Looking at Endowments as Tuition Rises - New York Times
By KAREN W. ARENSON
Published: January 25, 2008
http://www.nytimes.com/2008/01/25/education/25endowments.html?ex=1201928400&en=a21dd71d587a0f6d&ei=5070&emc=eta1
実際、大学もその方向へ動いているとのこと。
Harvard to Aid Students High in Middle Class - New York Times
By SARA RIMER and ALAN FINDER
Published: December 11, 2007
http://www.nytimes.com/2007/12/11/education/11harvard.html?scp=1&sq=Harvard+to+Aid+Students+High&st=nyt
Harvard’s Aid to Middle Class Pressures Rivals - New York Times
By JONATHAN D. GLATER
Published: December 29, 2007
http://www.nytimes.com/2007/12/29/us/29tuition.html?scp=3&sq=Harvard+to+Aid+Students+High&st=nyt
Yale Plans to Increase Spending From Its Endowment - New York Times
By ALAN FINDER
Published: January 8, 2008
http://www.nytimes.com/2008/01/08/education/08yale.html?ex=1200459600&en=6018cde2ff1fe455&ei=5070&emc=eta1
ハーヴァードが学生に対するfinancial aidを拡大したこととその影響のレポート。

もっとも、このような動きが目立ち始めたのは昨夏くらいからだが、その頃からサブプライムに起因する経済的混乱も本格化している。昨夏の時点ではそれまでのパフォーマンスで計られていただろうが、その後の経済情勢からすると財務状況は一気に萎んでいることも考えられ、この方向で単純に進むかは予断を許さない。


サブプライム問題の顕在化以降、金融セクターが萎縮していることからstudent loanについても得ることが難しくなりつつある模様。
Fewer Options Open to Pay for Costs of College - New York Times
By JONATHAN D. GLATER
Published: April 12, 2008
http://www.nytimes.com/2008/04/12/business/12loan.html?_r=1&th&emc=th&oref=slogin
【2008/10/30追記】続報:
College Tuition, Aid and Borrowing All Going Up, Report Finds - NYTimes.com
By TAMAR LEWIN
Published: October 29, 2008
http://www.nytimes.com/2008/10/30/education/30college.html?_r=1&th&emc=th&oref=slogin

【関連】

アメリカの裁判官(の給料)とリーガル・サービス市場 - アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する
サブプライム問題 - アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する

【More・・・】

*1 "public interest(系法律職)"の語は広狭様々なレベルで使われ、語感を見極め切れていない。狭義だと、政府の支払いで刑事被告人を弁護するpublic defender(この語も広狭の使われ方をするが)や貧困者向け法律サービスを指す、ようである。広義では、検察官事務所を含む政府勤務一般を指す気がする。最広義で、NPOを含める形になるが、NPOといってもACLUやNAACPで働くのは確かにpublic interestっぽいが、他方で業界団体みたいなのも含まれることもあって、微妙。
【関連】
"Lawyering in the Public Interest" - アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する
*2
High Tuition Debts And Low Pay Drain Public Interest Law - New York Times
By JONATHAN D. GLATER
Published: September 12, 2003
http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9C0DE1D9103BF931A2575AC0A9659C8B63
ちょっと古い記事だが、現在でも状況は変わっていないと思う。
*3 "Food wii be provided!"とあることに注意。これについては以前書いた→Faculty Presentation - アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する
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テーマ : アメリカ合衆国 - ジャンル : 政治・経済

23:19  |  アメリカ法  |  TB(0)  |  CM(2)  |  EDIT  |  Top↑

Comment

●3年で回収できるそうです

以前、セント・ルイスのワシントン大学LSで色々、話を聞く機会がありました。同校OBの弁護士と昼食をとりながら租税実務について雑談などという時間もありました。
IRSに二年ほどいて、ローン借りて、ご承知のように授業料の馬鹿高いワシントン大学LSを出て開業したという人物と話しました。
租税分野専門で、3年で完済し、お釣りが出たそうです。ミズーリ州は、弁護士人口密度が高かったと記憶していますが。
nk24mdwst |  2008年08月26日(火) 19:19 |  URL |  【コメント編集】

tax分野であれば腑に落ちるお話です。
他にはM&Aとか、知財とか、やはりビジネス・ローはそういう意味でも強いですね。
IZW134 |  2008年08月29日(金) 12:36 |  URL |  【コメント編集】

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