アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する

アメリカ法を勉強している者が今考えていること、など。

分母と分子

法科大学院の統廃合表明 法相「低実績校は整理」
「…新司法試験の合格率は4割程度にとどまって当初目標の7、8割には遠く及ばず…」
「「教育能力のない学校は学生に配慮した上で合併かやめるかし、あるべき法科大学院の姿を目指して整理すべきだ」」
http://www.47news.jp/CN/200808/CN2008080701000762.html
あのさぁ、LS学生が一学年当たり5825人いるのに対し(*1)、新司法試験合格者数が3000人固定(*2)だったら、「教育能力」の有無にかかわりなく絶対に「7、8割」なんて達成するわけないじゃん。
それに触れずにこういう書き方をするのは、相当分かっていないか、さもなければ悪意があるように思えてならないのだが。控えめに言ってフェアな書き方ではない。

もっとも(各大学個別のではなくトータルの)合格率のほうで大学側でコントロール可能な要素もないわけではない。「修了させない」という選択肢がある(*3)
でもこれは日本の教育システムが伝統的にやってきたやり方じゃないよね。ずっと入口の定員でコントロールしてきた(*4)
医学部定員増はスルーですかそうですか。医師については「質の低下」を心配する必要はないんですか。
asahi.com(朝日新聞社):09年度の医学部定員増へ、過去最大の8280人目標 - 社会
「全体で過去最大規模の8280人(08年度は7793人)程度の入学定員を目指す。」
http://www.asahi.com/national/update/0805/TKY200808050412.html
医師不足:医学部定員増条件、地域貢献計画を 文科省、大学側に - 毎日jp(毎日新聞)
「 09年度の入学定員を08年度(7793人)より487人増やすのが目標。」
http://mainichi.jp/select/science/news/20080806ddm012040064000c.html
来年度医学部定員 8280人程度に増員へ : ニュース : 医療と介護 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「来年度の国公私立大学医学部の総定員を、2008年度の7793人から約500人増やして、ピークだった1982年の8280人程度にすると発表した。すでに、179人の増員は決まっているため、残りの約320人の増員を目指す。」
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20080806-OYT8T00316.htm
1980年代前半と同水準の定員になる、とのことだが、ちなみにこの時期と現在の間には、団塊ジュニアが受験期を迎えた90年代前半が挟まれている。この間の時期、定員=分子が抑えられて、受験生=分母が拡大していたのだから、少なくともこれをベンチマークにすれば「質の低下」は避けられない(*5)

LSに話を戻せば、現状はちょっと多いよな、という感触については自分にもある。もうちょっと少なくていい。定員にして4000程度。これなら新司法試験合格者が3000人ということでも(*6)75%の合格率になる(*7)
教員の側から見ても、そのくらいの規模で集約して教育する態勢を整えていくのがいいのではないか(*8)

そして、法務省や文科省が介入するまでもなく、潮目が訪れるのは案外早いのではないか、というのが自分の見立てである。
特に「背伸び」して作った私大は、経営の目玉になると思って作ったのだろうが、合格実績が伸びず学生・受験生が集まらないとなると逆に一気に経営の負担になる。新たな投資をすることで状況を打開するというのも難しい(*9)。経営という観点からは既に厳しいところもあるのではないかと思われるし、そういう大学は“出口戦略”を睨む必要があろう。
そうだとすると、早ければ来月発表の今年度の結果を見て、一昨年・昨年も思わしくなかった大学は来年度以降の募集(今秋入試)の停止を発表する所も出てくるのではないか。今年は出てこない可能性も高いが、ここ2〜3年だろう。(*10)
そして、現在はどこも「最初」にはなるまいと根比べをしているが、「最初の一校」が出てくれば一気にLSをたたむ大学が現れる、と読んでいる。(*11)(*12)
Matimulog: LS統廃合の足音
法科大学院協会の8月7日付け声明(PDF)でも、青山善充理事長名で以下のように述べられている。
「現在の各法科大学院が万事理想的な状態にあると主張しているわけでは決してない。
…法科大学院の側から言えば、それぞれの法科大学院が自らの意思でこの重要な使命を引き受けることを決断した結果である。もし社会から負託されたこの使命に相応しい教育成果−−それは司法試験に合格さえすればよいということではない−−を挙げることができない法科大学院があるとすれば、淘汰されても当然であると私たちは考える。」」
http://matimura.cocolog-nifty.com/matimulog/2008/08/ls_fdf2.html

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文系学生のための実験授業

更新頻度が落ちているのはリアルで忙しいから…というか、このエントリも現実逃避(汗)
(15)科学実験 文系学生も : 教育ルネサンス : 教育 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
「科学に対する視野を、文系の大学生に広げる取り組みが続く。」
http://www.yomiuri.co.jp/kyoiku/renai/20080726-OYT8T00227.htm
大学でひろがる 文系のための科学実験 (大学プロデューサーズ・ノート 【早稲田塾】)
http://www.wasedajuku.com/wasemaga/unipro-note/2008/07/post_174.html
楽しそー <高校は理系クラスで入試は文理併願して法学部に落ちていたら理転して今頃ナノテクか何かをやっていただろうオレ

高校の先生に直接聞いたのか、高校の先生に話を聞いた大学関係者に聞いたのか忘れたのだが;
「最近の高校生は忙しい」のだそうで、授業でも実験とかをほとんどやらないらしい。
(→そこで、(受験生確保のためのPRの機会である)オープンキャンパスや出張授業では実験を見せて/やらせて欲しい、という話につながる、らしい。)

自分が高校生の頃は授業でガンガン実験していたのだが。
化学など、入試の関係で高3は2学期までに全範囲を終わるから、3学期は「残り時間は全部実験な」とひたすら有機合成をやっていた。で、センター試験が週末にある火曜日だか水曜日だかには目に硫酸をぶち込んだりしていた(笑)(*1)
そういう経験からすると高校で実験をやらないという話がピンと来ないのだが、土曜の授業がなくなった影響とかかも知れない。

とまれ、そうだとすると実験らしい実験にほとんど触れずに大人になってしまう若者も多いのだろうと思われるし、それは科学的な理解力が(も)問われるこの世の中では大問題だと思われるし、紹介されている取組自体は望ましい方向であろう。
ただ、関係の(必然的に理系の、恐らくは実験系の研究室の)先生の、意欲と尽力が必要だろうな、大変そうだな、とも想像する。
こういうのもその種の取組と関係あるのだろうか。
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TOYAKOとTOKYOは何か似ている

サミットも終わったようで。
そうでなくてもビミョーな感じのサミットだったようだが;

日本のマスコミの論調は、温暖化ガス排出に関して「日本の努力で、数値目標は盛り込めなかったが何とかアメリカを説得して一応のコミットメントを引き出した」という辺りだと思うが;
M氏と世間話をしていたら、どうやら海外での評価は「フクダはブッシュ(とハーパー・カナダ首相)とつるんで温暖化ガス排出へのコミットメントに反対するヤツ」という感じらしい。

日本政府の立場が海外メディアに伝わっていないのか、日本のジャーナリズムの情報収集and/or分析能力が不足しているのか、情報不足で自分には評価できないが;
いずれにせよ、日本のマスコミ(へ)の対応に問題があるのは確かだろう。
globeandmail.com: G8 takes small step on climate
CAMPBELL CLARK
Globe and Mail Update
July 8, 2008 at 7:59 AM EDT
"Environmentalists ... lumped Canadian Prime Minister Stephen Harper, who according to government officials urged other G8 leaders to be "realistic" about mid-term targets, into a group of leaders obstructing tougher action, along with U.S. President George W. Bush and Japanese Prime Minister Yasuo Fukuda."
http://www.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20080708.wg8_canada0708/BNStory/International/home

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ライセンスとガイドラインとニコニ・コモンズ

ニコニ・コモンズとクリエイティブコモンズ・ライセンスの誤解について瑣末な点ながら指摘する - 半可思惟
「ニコニ・コモンズはライセンスではなく利用ルールないしガイドラインである。ガイドラインであり、そしてサービスの枠組みの中で利用者が管理され追跡可能であるような設計をしているからこそ、上記問題点をクリアできるのだろう。逆に言えば、そこがニコニ・コモンズの限界を画することになる。」
「ニコニ・コモンズはライセンス契約ではなくガイドラインであり、著作者の一方的な宣言によって事後的に変更することが許されているからであろう。それは「柔軟」かもしれないが、利用者にとってみれば当初の利用条件が変更されるというリスクが大きく、法的安定性に欠く。」
http://d.hatena.ne.jp/inflorescencia/20080706/1215340015
あいまいな日本のニコニ・コモンズ - 雑種路線でいこう
「inf.女史が鋭いなぁと思うのは、ニコニ・コモンズがこういった柔軟性を発揮できている理由がライセンスではなくガイドラインであることを見抜き、それが法的安定性に欠く等の課題を抱えていることを指摘しつつ、ニコニコ動画の中であれば問題ないと気付いていることだ。」
「僕はニコニ・コモンズを契約ではなくガイドラインとして設定したことは、極めて秀逸な経営判断と感服する。ひとつは先に述べたように、ガイドラインだからこそ契約の方技術的な制約に縛られず、収益構造に合わせて柔軟な制約をかけられることである。…
…役所や経団連が躍起になってコンテンツ業界に契約主義を持ち込もうとしたにも関わらず、成功していない。
そのことが時にコンテンツの再利用を阻害している一方で、クリエイターの思い入れを受け止めた柔軟な貸借関係を設定し、法執行とは別のガバナンスを働かせてきた。業界の暗黙の了解と比べればガイドラインはずっとオープンだし、クリエイターの思い入れを斟酌した柔軟な権利設定ができる。」 http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20080706/nicoc
重要な指摘。
現時点ではだが私見を付け加える準備も能力もない。他日のためのクリップ&論点の指摘のみ−−しかも実務的ではなく理論的な(*1)
・ソフト・ロー論との接合の、知的財産の分野における可能性。
・CCライセンスは英米財産法における制限的約款(restrictive covenant)に範をとったものと思われるが、本当か。直接の出自を確認できないとしても、機能的には類似するのではないか。だとすればそれを参照した検討の可能性。
・何故「契約」ではダメなのか。契約に「後日ライセンス条件を見直すかも」と書き込むのとどう違うのか。

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習得し難い言語

昔、特に意味もなく「語学をマスターしよう」を思い立って、しかし貧乏学生だったのでお金をかけることもできないかったから、差し当たりNHKラジオの語学講座を片っ端から聴くことにした。これなら一言語一ヶ月2百数十円のテキスト代のみ。
全講座制覇、は放送時間と録音機材の兼ね合いで無理だったが(*1)、とにかく片っ端から聴いてみた。
しかし取り立てての目的意識もなく聴いても身に付かないわけで、いずれも精々綴りの読み方(*2)を覚えたくらいだった。
大学で第二外国語だったドイツ語も使い物になっていないんだよなー
経験則1: 語学は十代までにorz

しかし複数の言語を横に並べてみると見えてくるものもあって;
経験則2: 綴りと発音との一対一対応がしっかりしている言語ほど覚え易い

綴り→発音の対応がきっちりしていると、その法則性さえマスターすればテキストから音を再生できるようになる。そうすると早い段階からテキストさえあれば学習を進めることができるようになって、自学を促進する。

発音→綴りの対応がきっちりしていると、ブツブツ口で覚えたことが、そのまま書き言葉としても再生できるようになって、両者の協働に好ましい。
このことを感じたのがフランス語で、フランス語は黙字が多いので特に発音→綴りの対応が崩れ易い(読まれない子音字によって綴りが違ってくる)。他方、フランス語は主語の人称で動詞を活用する。にもかかわらず、綴りは違っても読まれない子音字のみしか異なっていない場合も多くて、活用表をブツブツ口に出しても綴りには復元されないので結局覚えなかった。

自分が取り組んだ中で綴りと発音の一対一対応がよくとれていたのがスペイン語。
この基準だと、英語はあまり習得し易い言語とは言い難い。綴り→発音の対応はまだマシだが、発音→綴りの対応はかなり悪い。

さて、この基準に照らすと、日本語は後天的学習者にとっては最悪に近い言語だと思う(汗)
発音をそのまま書き下せるだろう、って? 仮名だけならばその通り(*3)。しかし、漢字が厄介。
同音異義語を漢字の使い分けで区別している例は多い(発音→綴りの対応の崩れ)
他方、一つの漢字の読みが音・訓、さらにそれぞれ複数あるのもザラ(綴り→発音の対応の崩れ)
漢字圏出身の留学生が苦労しているのも見ているし、非漢字圏の西洋人だと日本語の会話は全くペラペラの人でも読み書きが覚束ない場合もままあって、それはそれなりに理解できる。

便利なんですけどね、漢字かな混じりの日本語システム(*4)
ひらがな、カタカナ、漢字を使い分けられるのが日本語の強み - Zopeジャンキー日記
「「日本語は漢字が多すぎ、むずかしすぎるため、日本語の読み書きや習得、普及などに困難を生じている」という問題意識」
http://mojix.org/2008/07/05/hiragana_katakana_kanji

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