アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する

アメリカ法を勉強している者が今考えていること、など。

カタカナ語尾ー

昔、IT絡みの法律論文の翻訳をしていて、技術関係の専門用語の訳に迷った。
そこで、情報科学科出身でそちらの方面で仕事をしている先輩に問い合わせてみた。
特に、単語末の「ー」があったりなかったりするのはどうなのだろう、ない場合のほうが多い気がするのだけれども、と。

回答:「分野によって違う。というか学会によって違う。もっと言えば学会の偉い人が誰かによって違う」

「…そうなのか(^^;;;」と思った。
マイクロソフト製品ならびにサービスにおける外来語カタカナ用語末尾の長音表記の変更について
「マイクロソフト株式会社…は、外来語カタカナ用語末尾の長音表記について、今後の製品やサービスの開発において国語審議会の報告を基に告示された1991年6月28日の内閣告示第二号をベースにしたルールへ原則準拠する方針を決定しました。…
…今後は、より自然な発音に近い表記を採用します。」
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=3491
個人的には語末に「ー」があるほうが不自然な感触があるのだが。何だかダラリとした語感がまとわりつくような。
英語の語尾においても強勢が置かれることはまずない音節だから、英語の発音からもさらに乖離して和製英語感が増すように思う。

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ID

ID = identification
〔名詞〕
身分証明書。

英語だと、ID = identification = (自己)同一性の表示、「お前が何者であるか」を問う、という、とても個人主義的な構成。

日本語は「『身分』証明書」、『身』の『分』の証明。社会全体のコンテクストが所与のものとしてあって、その何処に配置されるのか、という発想。

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固有名詞の英語読み

先の「ワルソー=ワルシャワ」からの絡みで。

最近の中等教育では、(中国語圏を除く)海外の固有名詞は現地読みで統一されているのだろうか。
自分の頃はちょうど移行期で、「プトレマイオス(トレミー)」とか「カエサル(シーザー)」とかいう案配だった。でも「アリストテレス」は「(アルストートル)」ではなかったな。
高校の世界史の教科書が厄介で、西洋の中世以降の人名を英語読みで統一していた。その代わりに巻末に対照表が載っていて「チャールズ=シャルル=カール=カルロス」とか無駄に覚えたのだが、でも「エカテリーナ2世」を「キャサリン2世」はないだろう、と思った。

英語で遣り取りするとなると逆に現地読みで覚えている知識を英語読みにする必要があって面倒なのだが、前記の通り自分は端境期の教育を受けているから何とか対応できる。完全に現地読みオンリーになったら英単語として一から覚え直さなければならないのだろう。
特に困るのが中国語系統の語で、こちらの頭の中には漢字の日本語読みで入っているのだが、英語では基本的に中国語読み。当の中国人と英語で話すときもなかなか単語が出てこなくて困るのだが、諦めて筆談に切り替えることも。

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Warsaw

Warsaw
〔固有名詞(地名)〕
ワルシャワ。ポーランドの首都。

「ワルシャワ」を英語読みすると「ワルソー」になることに今日ぶち当たった。
「ワルソー条約」って「ワルシャワ条約」って意味だったんね。
恥ずかしー(>_<)

あ゛でも、「ワルシャワ条約機構」の「ワルシャワ条約」と混同しないためか知らん。
「ワルシャワ条約機構」なんて、最近の若いもんは知らないんだろうなー(笑)

調べた…本当っぽい(*1)
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retribution / revenge

論文を読んでいたらNozickが報復・懲罰retributionと復讐・仕返しrevengeの異同を整理していたのにぶち当たった(*1)(*2)。へぇと思ったのでメモ。
報復・懲罰 retribution 復讐・仕返し revenge
(1) 違法行為(wrong)に対して為される 損害(injury)に対してであれば、必ずしも違法行為に対してでなくとも為され得る
(2) 違法行為の度合い(seriousness)に限定される 内在的限界はない
(3) 非人格的/非個人的(impersonal) 人格的/個人的(personal)
(4) 必ずしも感情的満足(emotional satisfaction)をもたらすとは限らない 必然的に満足感を追求して遂行される
(5) ルール(rule)によってコントロール(govern)される、すなわち報復的行為は一般化/普遍化可能(generalizable)でなければならない 純粋に、義務を越えたもの(supererogatory)である、すなわち事例Aで復讐を遂行した者も同様の事例Bで復讐を遂行する義務はない

なぜ「へぇ」と引っかかったかと言えば、近年の日本の犯罪や違法行為をめぐる言説に対する違和感が、両者を区別することで整理できるように思えたからだ。

例えば、医療行為において、医師としてはやるべきことはやったと思ったが、結果的に不幸な帰結になったことに対して、患者側が不満を抱え訴訟などに至る、という状況。
患者側には損害(injury)の発生=違法行為(wrong)という観念があるのではないか。

あるいは、被害者/遺族の(復讐)感情の刑事司法における取り扱い。
刑事司法というのは規制すべきと社会的に考えられた行為に対するリアクションであって、そこでは「被害者」は後景に退く、というのは近代型刑事司法を理解している法律家等の専門家であれば当然だと了解しているし、実際、(従来の)制度もそのように組み立てられている。
しかしそこで被害者感情・遺族感情を違法行為に対する制裁について前面に出してくるとすれば、報復(retribution)を念頭に組み立てられている制度に復讐(revenge)が侵入するという混交が発生しているのではないか。
しかし、違法行為の度合いに限定され((2)左)、必ずしも感情的満足をもたらすとは限らない((4)左)報復を念頭に組み立てられた刑事司法制度では、内在的限界のない((2)右)満足感((4)右)がもたらされることはない。こうした特性が最近の違法行為に対する過剰反応や厳罰化の要求につながっていると考えられそう−−だが求め得ぬものを求めているのだとすれば、いつまで経っても満足に至ることはない。(*3)

他方で、被害者・遺族が「再発防止」を訴えるのは普遍化((5)左)の主張とも位置づけられ、一筋縄でいかない。

【関連】

死刑:被害者感情論 - アメリカ発祥の地でアメリカ法を思考する
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